MENU

台湾総統選挙観察〔2〕(2004.3.11)

 風が変わり始めた。『中国時報』までもが世論調査で「緑営」有利を伝えるほど、「緑」の勢いが増しているという観測が出始めている。大枠としての「統独問題+公投」ということはあるにしても、それは既に遠景。現在は、客家→女性というように「拉票」のターゲットが移動しつつある。このように一つ一つターゲットを変えた戦線が展開されていくのが興味深い。客家票は分裂し、国民党の票田ではなくなってしまっている。

 「今回の選挙で緑が買ったら、台湾の『台湾化』は完全に決まってしまう。もう後戻りできない。」これは決して統一派の発言ではない。強烈な台湾ナショナリズム、リベラリズムの喪失を憂う向きの研究者が、酔って吐き出した言葉である。国民党中央党部に出かけてみた。なかなかさびしい雰囲気である。前回以上に活気がない。今回の選挙はこれまでの二回に比べると異常なほどに静かな選挙である。

 3.13の国民党の集会でどこまで挽回できるかがいまの焦点であろう。前回の総統選挙の連と宋の得票を足した結果が出れば、当然勝利なのだが、そうなっていないといところに、この4年間に陳総統の支持者が増したことを物語る。経済政策などでの「失政」は確かにあるだろうが、「国・親」で克服できるという保証はない。「ともかく資金がない。」それも国民党幹部のコメントであった。一部からは李登輝が国民党を破壊したという恨み節まで聞こえてくる。

 だが、一方で前回民進党が圧倒的な勝利をおさめた南部で、今回は「緑」の圧勝はないであろうという観測、また大台北の女性票は大陸との対立を忌避するという観点、また現政権の教育改革への失望から、基本的に「藍」に投じるのではないかという観測もある。

 「今回の選挙で国民党が負ければ、連宋の政治生命は絶たれることだろう。そうすると次回は馬英九しかいない。馬はいいが、彼は完全な外省人。台湾化がいっそう進んだあとでどこまで戦えるか…。」

 「今回の選挙で藍に勝たせて、彼らが執政党になれば、否が応にも台湾化する。そうすれば台湾の本土化は決定的だ。また同時に台湾の民主化の度合いも示すことができる。それに阿扁の政治生命も温存して2010年代まで延ばすことができる。」

他方、マスコミへの不満も聞こえてくる。台湾ではいったいいつ第四の権力としてのマスコミが誕生するのかという不満である。常にある政党と寄り添うようなマスコミはいかがなものかというのである。だが、一方で、中立なマスコミが育ちつつあるという指摘もあった。ケーブルの一部は多少の偏りはあっても、平等に報じようとする傾向もあるし、また新聞でも蘋果日報などは他の新聞に比べて中立的であると感じる。もしかしたら、2008年の選挙ではこうしたマスコミの姿がもっと浮き彫りになるのかもしれない。

 いずれにしても、まだまだ結論は見えない。だが風は動きつつある。〔了〕

  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

目次
閉じる