依然拮抗している。
国民党本部に出かけてみたが、極めて興味深いことに、7階の党史館にある歴史の展覧が大幅に変わっていた。従来は、孫文や蒋介石の写真や文物をちりばめていたのだが、今回は中央に連戦の祖父にあたる連横の『台湾通志』およびその草稿を据え、周囲の展示も台湾史にしている。もちろん、そこは霧社事件をはじめ抗日コンテキストを強調したものになってはいるが、国民党もまた台湾化している。当然のことながら、中国との統一とかいったことはない。かつて、国父紀念館では、中華民国のこととして中国全体のことを展示していたことがあるが、そういった展示は国民党もまたしなくなっている。メディアでは統一問題が重要という相変わらずの枠を強調するが、本気で統一を考えている人は皆無に等しい。要するに中国大陸との安定的な関係を望むかどうか、がひとつの争点ということだけである。15日に台湾に戻ったときも空港で熱烈歓迎を受けた。当然、国民党側にである。続々と帰る華僑、台商を歓迎しているのだ。
今日は、かつての宋楚瑜の牙城であった中興新村および台中に出かけた。中興新村はすっかり静かになっていた。16日に国史館に行ったとき、特別展示室で、うわさに聞いた「叩き割られた台湾省長印」を始めてみた。李登輝がどれほど宋のパワーの増大を牽制したかったがうかがえる。今回は、蒋経国の継承者を自認する宋がどこまで台北地区の票をまとめられるかが争点だが、まったくわからない。台中はやや「緑」のようだ。だが、南部は前回ほどの「濃緑」はない。中部はやや緑、東部は藍、客家は分裂。そうなると台北が勝負ということになろう。「拉票」は各方面にわたっているが、ほぼ結論が見えてきている。
このまま3月20日まで「爆弾」は出ないのであろうか。国民党は、有権者の背中を押す、最後の決め手を欠いている。選挙が近づけば近づくほど、省籍矛盾の要素が強まる面がある。20日の天気がよくないようであり、投票率の低下は国民党にとって不利である。陳総統の足を引っ張るはずの沈富雄の声明は未だに不分明だし、10年以上の前のことでどれほどの効果をもつか。また、多少足を引っ張るにしても、李遠哲・中央研究院院長の「挺阿扁」声明で相殺されるだろう。李遠哲の声明は、決して前回ほどの意味はもたなかったが、沈富雄を通じたネガティブ・キャンペーンを牽制する役割は果たした。
街は思った以上に静かである。前回、前々回に比べても静かである。〔了〕
コメント