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台湾から見た中国原潜問題(2004.11)

半年振りに台湾に向かっている。たいてい夏休みに台湾に行くのが通例であるが、今年はあまりに忙しく、台湾に史料を見に行く時間が無く、結局、上海とソウルと長春に会議に出て終わってしまったので、今回が五月末の会議以来半年ぶりということになる。

日本アジア航空に乗ると、機内にある台湾の新聞を片端から手に取った。ウェブ上で見られるとは言っても、新聞は手に取らないと様子がわからない。李登輝が日本の漫画「魁 男塾」の主人公に扮している写真が各紙に掲載されており閉口してしまうが、このほかにも10代の鬱病が深刻であるとか、大学生の麻薬販売集団が捕まったとか、明るいニュースは多くない。そうした中で、日本を賑わしている中国の潜水艦の事件が各紙に掲載されていた。この件については、「領海侵犯、中国側の遺憾表明」というコンテキストで日本では整理されているが、要するにグアム付近にまで海上防衛線を拡げることを従来から表明していた中国の戦略をそのまま浮き彫りにし(劉華清・前中央軍事委員会副主席/沖ノ鳥島をめぐる「島・岩礁」論争も同じライン上にある)、同時に12月の台湾・立法院占拠を牽制する役割もまた予測されていた。

『聯合報』は、「中共潜艦会蹤関島 美軍機一路追趕」において、日本の新聞の記事をリソースにしながら「台湾包囲」をもくろむ中国の海上勢力の拡大を報じた。『中国時報』は、ライスの国務長官就任が台湾に有利になるのではないかという憶測を北京の時殷弘が否定する記事を掲載し、その下に「潜艦迷航 北京向日表遺憾」という記事を掲載した。ここでは『聯合報』とは異なり、台湾にとっての本事件の関連性には言及せずに、むしろ日中首脳会談への影響など、日本での論調をそのまま受けるかたちで記事をまとめている。聯合報の特派員である陳世昌と、中国時報の特派員である楊佩玲の記事にはこうした違いがよく見られる。『自由時報』は、「潜艦事件 中国向日説遺憾」という記事をまとめている。これは、『聯合報』より一歩踏み込むかたちで『産経新聞』に掲載された台湾有事のための「台湾包囲」へ向けての策動だとする見解を紹介している。このあたりは『自由時報』のスタンスを明確に示している。だが、各紙ともに台湾の識者、政府関係のコメントをとっていない。いまのところは日本の記事の加工という域を出ていないというところだろう。

だが、注意すべきは「遺憾」は「遺憾」であって、小泉総理が述べた「陳謝」とはどの新聞も記していないということである。この点は留意しておくべきではないか。他方、筆者は何故町村「大臣」が駐日「公使」・程永華に抗議し、なぜ中国外交部「副部長格」の武大威が阿南「大使」に遺憾を伝えるのか、この対応関係のズレが気になるのだが、この点はどこも報じていなかった。違和感はないのだろうか。

明日から三日連続で会議であるが、12月の立法院選挙、両岸関係、対日関係などについて可能な限り、各方面と話をしてみたい。(了)

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