台湾の立法院選挙は、民進党が議席を伸ばし第一党の地位を確保しつつも、連合相手である第四政党台聯の議席が伸び悩み、他方で第二政党である国民党もまた議席をの ばし、第三政党である親民党との連合を維持していることもあって、「野党勝利」ということになった。投票前には、民進党有利が言われていたが、「意外な」 結果となり、新聞などでも一斉に「野党勝利」が伝えられ、連戦の満面の笑みがブ ラウン管から伝えられた。また台湾社会でも、この結果を受け衝撃が広がっているよ うである。これにより、独立路線の加速に歯止めがかかり、陳水扁政権も強気な議論 を控え、大陸との調整を求められよう。中国が台湾の選挙に介入すれば、それが逆に 独立派の票を伸ばすということで、中国はここしばらく台湾の選挙への直接的介入を控えてきたのだが、今度は陳水扁が独立路線を強く出しすぎたために、有権者からブレーキがかけられた恰好である。台湾の有権者のバランス感覚、またあるいはアイデ ンティティの動揺の結果であろう。これによって、「台湾」は当面グレーゾーンの中に引き続き位置づけられることになろう。
無論、総統選挙とは異なり、立法院選挙は個別の選挙区の状況をきっちりと分析しな ければならない。これはいま資料が手元に十分にあるわけでないので、おこない得な いが、単純に数字を見ても、「野党勝利」には首をかしげたくなる面がある。定数2 25のうち、もともと与党連合92、野党連合111、無所属ほか14であるが、今回の選挙の結果は与党連合101、野党連合114、無所属他10となっている。ま た、党別に見れば、与党側が民進党が80⇒89、台聯が12⇒12、野党連合側の国民党が66⇒80、親民党が45⇒34、無所属他が14⇒10となっている。
これを見れば一目瞭然だが、実は与党連合のほうが野党連合よりも議席を増やしてい るのである。野党勝利というのは、台湾化が強まる中で長い間劣勢に立たされ、今回 も敗北が予想されていた国民党・親民党が「過半数を維持した」ということを示すに 過ぎないということである。民進党も第一党としての位置を維持している。また、国 民党が一番議席を増やしたことは、宋楚瑜現象が弱まる中で宋が国民党との一体化を 目指していることの現われとして起きたもので、親民党の議席が国民党に流れたもの と見ていいだろう。そうした意味では、台湾は二大政党化の局面に近づいているとい うことになるだろう。
しかし、台聯は議席を増やすことはできず、全体として「独立」に抑制的な結果と なったことは確かである。また中国大陸、周辺諸国、アメリカがほっと胸をなでおろしたことも確かである。これは「独立」よりも「現状維持」への傾向へややカーブ していくことを示すことになろうが、上記のように与党側のほうが議席を伸ばしてい ることは確かであり、ギリギリのところで野党が踏みとどまったということである。 だが、今回の結果、立法院での議決が必要な事項、たとえば憲法改正などについて与 党の思惑がそのまま通ることはないということは重要だ。(了)
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