川島 真
11月に台湾を訪問した際に、中国国民党党史館の上層幹部に話を聞く機会を得た。今年の三月の総統選挙の後の敗戦、混乱以来、中国国民党党史館の閲覧室は公開をストップし、各方面から様々な苦情が寄せられていた。その後、党内の状況が次第に落ち着く中で、9月から公開を再び開始した。多くの研究者が、堰を切ったように档案を見ている。だが、党史館の置かれる状況は「未定」であるという。「档案は大丈夫」といいつつも、「12月の立法院選挙の後に」決まるとのことであった。費用、人事などもそのときに決まるという。
台湾の選挙結果は政治の変異にも結びつき、それが歴史符号のバランスの変化、延いては史料価値の変化、そして公開状況の変化にも結びついてきた。だが、昨今の台湾社会の不安定な状況を反映して、歴史符号のバランスも混迷し、今後の見通しが立てにくい状況になっている。そして、以前ならバランス調整ですんだものが、調整以上のことが起きていく可能性もある。
他方、『蒋介石日記』については、蒋一族が所蔵し、おそらく一部がマイクロ化され、それを打ち出したものが台湾の国史館/党史会で部分的に所有され、それもいまでも閲覧が制限されている。だが、1935-37年部分については今後スタンフォードのフーバー研究所でデジタル化して、2・3年後には同所で公開していくことだとのことである。『日記』をはじめ、文書の保存を意識している蒋一族が原本をフーバーに移した結果である。だが、『日記』のすべてがマイクロ化されたのかどうかについては不明。また一冊分は紛失している。(了)