本研究計画は、世界の中国研究界の中で問題とされてきた、歴史研究と現代研究の間の分断状況を発展的に克服し、長期的な視野にたった研究を目指す。昨今、1949年を越境的に捉え、連続論の観点から歴史を再構成しようとする試みであるが、それらは必ずしも歴史研究と現代研究が共同でおこなっているわけではなく、両者は「ねじれ」、出あわない状態にあるという印象である。だが、本研究と基本的に方向性を同じくしたり、関連する研究計画も内外に存在する。国内では、申請者もメンバーである早大COEプログラム「現代アジア学の創生」における研究班「中国外交(史)研究会(清朝から現代に至る中国の外交に関して総合的な観点から研究を行う)」、また申請者が代表を務める「国際連盟における中国外交と日中関係-中国外交档案による「リットン史観」の克服―」などがそれであり、これらと協力しながら研究を進めている。平成16年度は、早大COEと合同で「中国外交史ワークショップ」を開催。他方で、歴史方面を中心に、中国外交史研究会を東京で二度開催した。本年(平成17年度)は、(1)16年度同様に、早大との協力関係の下で研究会を継続的に開催し、また外交史研究会も東京などで三度開催。(2)国際政治学会の東アジア国際政治史分科会にて協力者らが報告者となることで19世紀の中国をめぐる外交についての多元的な問題提起(文明国問題など)をおこなった。そして、 (3)台湾の中国近代外交史網站http://archms1.sinica.edu.tw/foreign/index.html との連携を深め、研究代表者が発掘した中国の外交官の日記の内容などを解読して公開した。(4)そのほか各協力者が各々のテーマで研究を深めた。協力者の岡本隆司の『属国と自主のあいだ』(名古屋大学出版会)がサントリー学芸賞を受賞したことは特筆に価する。なお、本科研の活動状況はhttp://www.juris.hokudai.ac.jp/~shin/017/kaken-index.html にて随時公開されている。
科学研究費・基盤研究B「中国外交研究の再構築-外交史と現代外交研究間の断絶の克服と長期的視野の獲得-」平成17年度報告書
2006年3月31日