2004年7月18日(文責:川島真)
第一回 中国近代外交史研究会
1.日時・場所
2004年7月18日(日) 16時―18時、京都府立大学二号館小会議室
2.プログラム
16:00-16:20 川島 真(北海道大学)「本研究会の開催にあたっての趣旨説明」
16:20-17:00 岡本隆司(京都府立大学)「清末の出使日記とその周辺」
17:00-18:00 質疑応答
3.参加者(敬称略)
箱田恵子(京都大学文学部COE研究員)、青山治世(愛知学院大学大学院研究員)、谷渕茂樹(広島大学大学院博士課程)、廖敏淑(北海道大学大学院博士課程)、菰田将司(筑波大学大学院博士前期過程)、菅澤幸太郎(日本大学大学院修士課程)、小林義之(早稲田大学大学院修士過程)、岡本隆司、川島真
4.内容概略
趣旨説明については別添資料を参照。
岡本隆司「清末の出使日記とその周辺」は、出使大臣が出使章程に基づいた日記、執務日誌、兼旅行記ともいえる史料である「出使日記」についての問題提起であった。これは、従来、岡本、箱田、青山の三名で進めていた読書会・研究会の経過報告でもあった。報告は大きく二つの部分からなり、前半では出使日記という史料それじたいに対する検討、後半ではより具体的に馬建忠や張蔭桓の「日記」などをとりあげ、その形成過程、記述の根拠などについて紹介した。箱田からは、これまでの研究会の成果、課題がはっきりとしたというコメントがあった。
これに対して、李鴻章らへのフィードバックがどの程度あったか(菰田)、張の日記の中で紹介された黒假(Hager)からの問題の見え方(小林)、アメリカ国務省の華僑問題、あるいは中国の派遣した外交官への姿勢(谷渕)、張の日記の出版の背景(廖)、日記の書き手(随員か大臣か)による位置づけの相違(菅澤)などといった質問が数多く出され、極めて活発な議論がかわされた。
従来、「思想」、あるいは「文化交流」(日本に特有)に還元されがちであった出使日記の世界を、制度的な問題、外政機構をめぐる議論の中にいかに落とすかという問題提起は、今後の中国外交史研究の方向性の観点からして実に重要であり、本研究会の出発点として相応しい充実した報告であった。(記:川島 真)