08.Jul.2004
於 北海道大学 人文社会科学総合教育研究棟 W401講義室
題名:「中国語圏における映画史」
発表者:三澤 真美恵氏(早稲田大学演劇研究センター)
2004年7月8日、北海道大学において、川島大学院ゼミと合同という形で、三澤真美恵氏による講演が行なわれた。そこでは、映画史を研究する際に、従来とは異なり映画に関わる様々な人々やそれが持つ政治的言説など、映画の社会的コンテクストを考えることにより映画の持つ意味を考察するというアプローチをとることが強調された。また、従来の大陸及び台湾における、国共両党のいずれかを正統としその文脈に適合する映画だけを高く評価する傾向が批判され、より多面的に映画を考察する必要性が指摘された。本講演では、随時ビデオ上映を交えつつ、20世紀初頭の映画の揺籃期から現代までの映画史の流れが一気に俯瞰され、中国映画史の概要を知ることができる非常に貴重な機会であった。
その中では、映画の言語をどうするかという問題が国語統一問題に絡んでいくことや、30年代以降の左翼文化人の映画活動とそれに対する言論・思想統制の一環としての国民党の統制の様子など、映画をめぐる様々な問題が浮き彫りにされた。また、インディペンデント映画の登場や最近の動向からみて、統制というよりは国策としての映画の商業化へ、という方向に進むのではないかとの将来的な見通しが示された。総じて、档案を用いることなどによって映画史を従来とは異なりよりアカデミックなものにする必要性があることが強調されていた。
(北大法学研究科博士課程 柳亮輔 記)