日時:2006年6月21日(水)16:30~
場所:新棟W301教室
題名:「中国の軍事外交と日中防衛交流」
発表者:松田 康博氏(防衛庁防衛研究所)
司会:川島真(北大公共政策大学院、法学研究科)
ディスカッサント:諏訪一幸(北大言語文化部)、蔡東傑(台湾・国立中興大学)
★中国の軍事力をめぐっては様々な観測がある。全体的な傾向としては、中国側に軍事情報の公開を求め、その透明性を高めようとする動きが国際社会にあり、その結果として次第に中国の軍事力が明らかになりつつある。欧米のシンクタンクの中には、中国の軍事力について、従前のデータよりも数倍するものであると結論付けるところも現れてきている。また、EUの武器輸出解禁も今年の課題となっており、関心が高まっている。 他方、中国は各国との間で、軍事外交、軍事交流を積極的に展開して きている。日本も例外ではない。これは中国の軍事面での対外的なアカウンタビリティ担保のためでもある。だが、こうした状況については、十分な情報が外に出てきているわけではない。そこで、防衛庁防衛研究所に勤務され、日本の第一線で中国の軍事について研究している松田康博氏を招聘し、ご講演をいただくことにした。また、以前外務省に勤務し中国問題、中台関係のエキスパートであった諏訪一幸氏、また台湾における現代中国外交研究の第一人者として知られる蔡東傑氏をお招きして研究会を開催する。
【参考文献】
松田康博「中国の二国間軍事交流―対日「新思考」外交の試金石―」(『東亜』第437号、2003年11月)
松田康博「中国の軍事外交試論―対外戦略における意図の解明―」(『防衛研究所紀要』第8巻第1号、2005年10月)
参加記
まず始めに、『防衛研究所紀要』に掲載された論文に依拠して、中国の軍事外交に関する説明が行なわれた。そこでは、軍事外交の定義、位置づけ、内容による分類、機能による分類、地政学上の分類が行なわれ、それにより中国の軍事外交の特徴が浮き彫りにされた。次に、後半は日中防衛交流についての説明が行なわれ、日本の対中国戦略・政策の中で対中国防衛交流をいかに位置づけていくべきか、という問題が提起された。そこでは、想定可能な様々なシナリオが提示された上で、まず日本の対中国戦略を長期的な視点から明確に構築する必要性が強調された。また、中国以外の諸国との防衛交流全体や、多国間の安全保障枠組みにおける、対中国提携・政策の重要性が指摘された。さらに、対中防衛交流における限界と可能性についても述べられた。
コメントや質疑応答においては、外交全般における軍の影響力、中国国内の危機管理の問題、軍事外交への伝統的要素の影響、中国における外交を担う主体の多元性、軍内部の多様なアクターと予算把握における問題などをめぐって、非常に活発な議論が展開された。また、防衛交流の現場における様々な興味深い具体的な実例を挙げて説明が行なわれ、普段あまり知ることのない情報に接することができ、大変有意義かつ貴重な機会であった。
(記:北大法学研究科博士課程 柳亮輔)