アジア政治論・質疑応答(6)
■進め方
(1)質問回答表のまわし方(3年女子)
⇒回覧だけでは見る時間がないという話でした。メイルでまわしているから大丈夫
という安心感がこちらにあったのですが、もしかしたらメイルで見ている人は殆ど
いないということなのかもしれません。今回からメイルでも回覧しますが、プリン
トしてまわすようにします。
■授業内容
(1)台湾出兵の際に清が支出した「見まい金」と「賠償金」の違いについて(4年女子)
⇒「見舞い金」なら相手を気の毒に思って出すお金。「賠償金」は自分の落ち度を
見とめて払う金。外交上は大きな相違がある。
(2)互市国になるのにはどういう方法があったか。(文3年女子)
⇒互市国になるには何かしらの手続が必要かと言われれば、さして必要がない。
互市国には、日本のように中国以外の地で通商をおこなうケースと、イギリス
などのように広東で貿易をおこなうケースがあった。互市国は、朝貢国に比べ
て貿易をおこなうチャンスに恵まれておらず(広東の市場である制限下で貿易
をおこなうだけ)、それに対して朝貢国は朝貢使が北京を往復している間は自由
に物品の買い付けをおこなえたし、また北京に行った使節は皇帝からの土産と
ともに、北京で交易をおこなうことができた。
(3) 中国外交に見られる「縦割り」と「外見的な一枚岩」はどのように整合性がつくの
か。(4年男子、3年女子)
⇒この点はわかりにくかったかもしれません。たとえば今回の遼寧の事件の場合、
中国側は一枚岩のように見えますね。このような自己や事件、あるいは問題化され
たものについては「一枚岩」になります。しかし、「行政」に類する部分、つまりル
ーティーンに属する部分などは特に縦割り化します。また、ある部局が進めていた
ことが、別の部局と齟齬をきたすということが判明した場合、急に(外から見ると)
一枚岩になってしまうことがあります。この問題は、上位下達と地方分権にも関わる
問題ですね。
(4) どこで外交をしているのわからない?(4年女子)
⇒確かに外交を含めて政策決定過程が見えないというのは困ることです。中国の場合、
朱首相と江総書記の周辺のブレーンが処理している問題が多く、行政機構だけ見ていて
もわからないケースが多いと思います。「頭の良い人」が仕事をする、ということよりも、
パワーエリート集団が政策を推し進める、ある意味では小回りのきく政治空間があるとい
うことでしょう。しかし、注意しておいてほしいのは、日本も含めて、政治も行政も外交
も人がやっているということです。そして、誰もが(人によって得手不得手はありますが)、
その担い手になれるということです。
(5) 三跪九叩頭を欧米使節ができなかったのはプライドか(3年女子)
⇒そうですね。プライドといえばそうですが、何に対するプライドかということは難しい
ですね。一般的に、自らはイギリス国王の名代なのだから、イギリス国王が跪くことにな
るから受け入れられないという言い方を使節たちはしていました。そうすると国家とか国
王に対するプライドということになりましょうか。
(6) 軍事方面でも地方が自立的なのか(3年男子)
⇒中国の地方主義というものが軍事にもおよぶことがあり、それが清末民初の「軍閥」に
なるわけです。ただ、現在の中華人民共和国では、省をまたがる「軍区」が設定されてい
ます。これらの地域は「地方」としてまとまるには広すぎます。ただ、数年前広東軍区が
実質的に中央から自立してしまうということがありました。葉氏一族がその広東軍区を手
中におさめ、経済発展を背景に大きな力をもったのです。しかし、これも中央からの圧力
(特に人事・財政など)によって壊滅させられました。
(7) 中央アジアやインド、西アジアについての情報(3年女子)
⇒インターネット以外という条件ですね。そうなると活字媒体や映像、そして人というこ
とになります。本や雑誌はたくさんありますから、検索すればすみます。あとは映画です
ね。各地で開かれるアジア映画祭に行ってみるとか、あるいはアジアの芸術関連のイベン
トも各地で開かれます。それから留学生とか、札幌ですと札幌国際プラザで開催されてい
るイベントなどもいいのではないでしょうか。
(8) 中国シフトが強まると問題か(文3女子)
⇒別に問題というわけではなく、何のアセスメントもなしに一辺倒になることへの警戒を
言っただけです。