2003年 5月23日
第八講義
アジア政治論講義
質問などは質問票に記入ください。授業が終わった後にいらしてくださっても結構です。
メイルのかたはshin@juris.hokudai.ac.jpまで。また教務掛前の8番のボックスに質問票をいれてくださっても結構です。
レジュメなどは、URL http://www.juris.hokudai.ac.jp/~shin/ にあります。
0.時事関係
今日は少し多いかもしれません。
ガバナンス
1.国内改革を再優先課題とする中国
2.特に重視される経済建設
(1) 農業建設
(2) 郷鎮企業
(3)工業発展
(4)地域格差
<格差の状況>
<格差拡大の背景>
<格差拡大にともなう問題性と対策>
(5)貧困・環境
<貧困問題は解決されていない>
・貧困人口 ⇒ 現在3000万人前後(年間所得650元前後以下)
分布は内陸部中心。
・貧困対策 ⇒ 1986年、国務院が「貧困地区経済開発領導小組」設置。
1994年、国家八七扶貧攻堅計画
(94年からの8年間で、8000万人の農村貧困人口の衣食住を満た
す=「温飽」状態にする)
年間所得を500元、農村インフラ、教育・文化・衛生建設
<砂漠化・森林破壊 - 貧困から来る環境破壊>
・深刻な砂漠化 ⇒ 先週の宿題「なぜ北京周辺は砂漠化したのか」?
学部3年Y.Tさんの回答
煉瓦で万里の長城を造ったから、インダス文明のように木を切りすぎて砂漠化したのではないかと思います。あとは乱伐(都の人の生活の為の薪の切り出し、炭を作るための切りだし)のあと、植林もしなかったことが影響していると思います。温床等の暖房、御飯を炊くなどなどかなり消費されたのではないでしょうか。
・歴史的視野
・黄土高原の砂漠化 ⇒ 長安・洛陽周辺の都市建設 ⇒ 黄河の枯渇
・華北平原の砂漠化 ⇒ 万里の長城、北京建設 ⇒ 北京周辺の砂漠化
【参考文献】
上田信『トラが語る中国史-エコロジカル・ヒストリーの可能性』
(山川出版社、2002年)定価1300円(税別)
上田信『森と緑の中国史-エコロジカル・ヒストリーの試み』
(岩波書店、1999年)定価3,000円(税別)
・しかし、自然環境が悪化したのは中華人民共和国時代
1958年 大躍進時代の「土法高炉」(銑鉄) により農村部の森林伐採
1960年代~70年代 食糧(穀物)増産運動 (森林から農地への強引な転換)
・1980年代初頭、1950年代に比べて砂漠面積が2倍。主要森林は21世紀初頭に消滅という 警告。
黄河は深刻 ⇒ http://j.people.ne.jp/2003/03/01/jp20030301_26511.html
中華民族の「母なる川」が水不足の危機に直面している。今年に入り黄河の流量が激減しており、このままいくと1950年以来最低の流量になることが予想される。寧夏回族自治区では黄河の流量が激減していることを受け、3年前から大規模な節水キャンペーンを展開。2001年は黄河からの取水量を7.4%削減、2002年はさらに3.4%削減するなど、黄河からの取水量を1999年比で17.4億立方メートル減らした。黄河上流では乾燥した気候のため、龍羊峡、劉家峡の両ダムでも貯水量が不足している。寧夏回族自治区では、農耕用水の需要が最も高い4~6月の取水指標が、今年は例年を40~52%下回る水準に設定されており、同地区の農業生産にも影響を与えることが予想されている。
「人民網日本語版」2003年3月1日
※北海道もひとごとではない??
<「三廃」問題-経済成長のもたらした環境破壊>
・廃水(水質汚濁)、廃気(大気汚染)、固体廃棄物
廃水 ⇒ 工業廃水の減少、しかし生活廃水の増加
廃気 ⇒ 石炭による硫黄酸化物が深刻 ⇒ 酸性雨 ⇒ 日本にも?
固体廃棄物 ⇒ 果たして産業廃棄物は??
<環境行政>
・1973年 第1回全国環境会議 ⇒ 環境行政のはじまり
(新規建設は設計、建設、操業の3段階で本体工場に汚染処理施設設ける)
・1979年9月 環境保護法(施行)
・1982年、第2回会議、89年第3回会議
・80年代を通じて諸法整備(大気汚染防止法、水汚染防止法、固形廃棄物管理条例など)
・1989年 環境保護法正式採択
・1992年 国連環境・開発会議(リオ) 発展途上国の立場で…
・94年 「中国版 アジェンダ21」 ⇒ しかし解決されない環境問題
※経済発展と環境保護
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参考(日本のODAから)
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/odaproject/asia/china/contents_01.html#m011101)
◆環境情報ネットワーク整備計画
実施年度 平成11年度及び平成13年度
供与限度額 9.40億円、10.51億円
案件概要
中国では、急速な経済発展に伴い、硫黄酸化物、窒素酸化物の排出量の増大、酸性雨被害の増大等の公害が深刻化している。これらの公害は、海を越え日本にも影響を及ぼす問題であり、地球的規模の環境問題である。
このような環境問題に対処するには、法的規制、技術改良などが必要であるが、そのためにもまず正確かつ迅速なデータの収集および分析が必要である。また、環境問題は行政区画を越えて影響を与えるものであり、個々の市が別々に情報を所有しているより、それぞれが情報を共有し合うことが政策決定上重要である。
このような状況の下、1997年9月の日中首脳会談において、国、省、市、県の各レベルの環境情報ネットワークの整備について日中双方が努力していくことが提案された。本件は、中国国内の100都市においてLAN構築等のためのコンピュータおよび国家と都市を結ぶWAN構築に必要な衛星通信機材の供与する案件である。
この計画の実施により、大気、水質等の調査結果の速やかな収集及び分析、情報の共有が可能となり、必要な環境政策の立案に資するものと期待される。
<京都新聞HPより 京都議定書について>-―――――――――――――――――――
中国外務省条約法律局参事官
劉 振民氏
先進国はぜいたく
途上国に義務なし
途上国に温室効果ガスの削減義務を課すかどうかは京都会議の焦点の1つ。経済成長で世界第2の二酸化炭素(CO2)排出国になった中国の劉振民・外務省条約法律局参事官は「途上国の温室効果ガスの排出は生存に必要なもの。新たな削減義務は認められない。まず先進国が排出削減に努力し、途上国に技術・資金援助をすることが重要だ」と主張する。
◆中国での地球温暖化の影響をどうみているか。
将来の海面上昇によって、人口が集中する沿岸部に大きな被害が予測される。内陸部については、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)も明確には予測していない。影響はわからない。
◆途上国に排出削減を義務づけようとする動きが出ているが。
いかなる新たな義務づけに反対する。条約の柱は、途上国と先進国が国情や経済状況に応じて「共通だが、差異ある責任」を持つことだ。ベルリン・マンデート(合意)では、途上国に削減義務はない。先進国が意味のある温室効果ガスの削減目標を決め、努力することが最も重要だ。
◆その理由は。
先進国は世界の人口の20%に過ぎないのに、エネルギーの70%を消費し、CO2排出の60%を占めている。途上国の排出は生存に必要なものであって、先進国の排出はぜいたくによるものだ。途上国の排出はやむをえない。
◆先進国に何を求めたいのか。
先進国が意味のある排出削減目標を掲げたうえで、技術移転や資金援助で途上国を支援することが必要だ。途上国の排出総量は、現在は少なく、途上国を支援することで温室効果ガスの増加率を抑制することができる。
◆途上国に技術・資金援助してガス削減の実績を先進国に繰り入れる共同実施や、排出枠を売買できる排出権取引も議論されているが。
G77+中国グループ(途上国)としては受け入れるつもりはない。途上国にとって、実際には排出削減の技術が向上しないまま、削減の義務だけを課せられることになるからだ。
◆途上国グループ内で意見の違いはないのか。
補償基金の設立は産油国の提案で、中国の意見とは異なるが、提案を支持している。削減対象ガスを3種類と主張しているのも、グループ内の妥協の結果だが、交渉においては必要なことだ。