2001年3月末に北京の日本学研究センターからもどった後、交流協会からの委託で「台湾における日本研究」という調査をおこなった。その結果を、2004年春に『台湾における日本研究』として交流協会から刊行したが、調査結果についてそれをデータベースとしても公開することになり、本年六月より交流協会HPで一般の利用に供している。詳細は、HP上の説明を見ていただきたいが、この調査はあくまでも基礎調査としての役割を果たすためにおこなったもので、具体的には戦後台湾における修士論文・博士論文、また雑誌論文、単行本などをデータベース化しようとしたものである。しかし、時間、研究費、人的なさまざまな制約の中で、まずは修士・博士論文を中心にデータベースに組み込み、雑誌論文や単行本は爾後の作業となった。結果的に、修士・博士論文は8割前後、雑誌論文は半数弱(あるいはそれ以下)、単行本は微小といった状況になった。しかし、このようなデータベースは不完全であっても公開すべきと考え、アップした。不完全でありながらも公開するのは、一定程度の分量が確保できたということだけでなく、この作業を引き続き
台湾の日本研究者がおこなうこと、などを期待してのことでもある。そもそも、どこまで日本研究に含めるかという問題、また根本的な問題として日本語、日本語教育を除外したことといった問題があり、大いに議論を要するところであると思う。しかし、この作業が、世界の中における台湾の日本研究のありかたや、今後のことについての展望を考える上でのひとつの材料になればと考えている。
他方、筆者が以前台湾学会の業務としておこなった「日本における台湾研究データベース」と比較しながらそれを見るということも興味深いことであろう。そして、台湾における日本認識の変遷が示す、台湾の脱植民地化の問題、などといった政治史の先端にも関わることであると考えている。
なお、この作業を進めるにあたっては、北海道大学大学院博士課程(当時)の井上結香子さん、政治大学大学院修士課程(当時)の楊□光さんの御助力を得たことをあわせて申し添えたい。
2004年8月25日
川島 真