2006年度サントリー文化財団・研究助成「人文科学、社会科学に関する研究助成」
研究テーマ:「東アジアにおける条約改正の連鎖と規範共有-日中台共同研究」
研究代表者:川島 真(北海道大学公共政策大学院)
期 間:2006年8月~2007年7月
助 成 額:100万円
共同研究者:岡本隆司(京都府立大学文学部・助教授)中国近代史
共同研究者:五百旗頭薫(首都大学東京法学部・准教授)日本政治外交史
海外からの招聘予定研究者:唐啓華(台湾・国立政治大学歴史学系・教授)
茅海建(中国・国立北京大学歴史系・教授)
研究目的・特色:
19世紀後半から20世紀前半にかけて、日本・中国(あるいは列強以外の国々)の外交目標は、条約改正を実現し、文明国として国際社会に参加し、自らの国際的地位を高めつつ、列強の一員となること(強国化、富国化、大国化)であった。従来、こうした状況については、“近代化比較論”の観点から、その成否(日本=成功、中国≠失敗)、時期(日本=早、中国=遅)が論じられてきた。しかし、中、日はそれぞれ無関係に外交をおこなっていたわけではない。日本が中国を反面教師=伝統とし、欧米に対しては自らを強国、文明国=近代と位置づけたことは広く知られるが、中国画日本の事例を参考にし、日本から顧問を招いて(有賀長雄ら)条約改正にあたったことや、そうすることで共通の枠組みが東アジアに形成された可能性があることは殆ど言及、検討されない。そこで、本研究では、①日中間(シャムも視野に入れる)における条約改正の連鎖を行政権回収をも含めて検討し、②それが東アジアの共通の規範形成に与えた影響を明らかにすることを目的とする。また、この二点が本研究の特色ともなろう。
将来性・期待される成果:
従来、日中間の優劣とか近代化の早遅の枠組みで論じられていたものを、同じ時代を体験し、相互に連鎖しながら、共通の規範形成に向かう面があったという方向に組み替え、あわせて一国史に陥りがちな外交史、パワー論に陥りがちな国際政治史の問題点を相対化し、東アジアの大の外交史を形成していく上での第一歩となることが期待される。
これまでの研究の実施状況:
これまで、中国近代外交史研究会を4回にわたって開催し(申請当時)、五百旗頭の唱える行政権回収の重要性について中国外交史にも適用可能であることを確認する等、共通の土台は築かれている。現在、ネットワークをアジア大に拡げ、海外の研究者とも議論し、成果を内外に出していくことである。(日本外交史と中国外交史の対話は、その必要性に比して従来ほとんど実現されておらず、またそれを東アジア大でおこなうことは極めて異例であるところ、本プロジェクトは既にその素地を得ているという利点がある。)
研究スケジュール(予定):以下は申請段階でのスケジュール。今後助成金額に応じて要検討。
2006年8月 第一回研究打合せ
ウェブサイト、ホームページ立ち上げ、スケジュール確定
8-9月 各自研究テーマにそって資料最収集、MLで常に論点の交換
2006年10月 第二回研究打合せ研究会
8-9月の成果報告会、テーマの再調整。シンポジウムスケジュール決定。
11-12月、各自論文のテーマを進める。海外メンバーとは代表団が別個に調整。
2007年1月 第三回研究打合せ
シンポジウム提出原稿読み合わせ、韓国の招聘者の検討。
2007年2-3月 シンポジウム開催“東アジアに於ける条約改正の連鎖と規範形成”(ゲスト3-5名)
2007年4月 原稿の再提出、MLでの議論
2007年5-7月 各自論文の修正、必要に応じて第四回会合開催。
(公刊のための手段を講じる)