御礼
このたびは拙著『中国近代外交の形成』(名古屋大学出版会、2004年)のサントリー学芸賞受賞につき、温かいお言葉を賜り誠にありがとうございました。9月の半 ばにこの報に接したときには吃驚いたしました。しかし、考えてみれば、特に最初の著作というものは、殆ど心のうちと手のうちをそのままさらけ出してしまうようなものであり、それを誉めていただくというのは、赤面の至りです。加えて、博士論文の時期におこなう実証研究というものは、ある意味でうまくいくはずがなく、修正・加筆すべき箇所が多々あるものであり、完成度はきわめて低いものとなっています。
拙著は、中国近代外交史の論点表のようなものであり、その史料的、また議論の場としての可能性を提示しようとしたものです。外交史の存在それ自体に疑問符が呈さ れていた以上、そこから始めるのが第一歩であると思いました。博士論文から本書の出版までに三年かかりましたが、その間の修正は実は相当な分量、程度に及んでいました。この修正には北京での仕事の経験が大きく影響していると思います。この経験と北大法学部という、学問的に自由で包容力のある職場にいられたことによって、歴史的な題材を扱いながら、いまの中国を見る目線のようなものが形成されたのかもしれないと思います。
皆様からの祝賀の言葉に接し、日ごろからいかに多くの方々に支えられていたのかを、あらためて実感いたしました。まだまだ蹊を成すどころか、足を一歩踏み出した に過ぎませんが、今回のことを糧として精進いたしていく所存でございますので、今後ともどうぞ宜しくお願いいたします。ありがとうございました。
2004年11月10日
札幌にて 川島 真
【追記】受賞の言葉、および船橋洋一氏による選評は以下にございます。
http://www.suntory.co.jp/news/2004/8962.html
・『北大時報』2005年1月号 部局ニュース へのリンク http://www.hokudai.ac.jp/bureau/news/jihou/jihou0501/610_07.htm